今日(7月8日)、山口県セミナーパークにて、北海道大学客員教授、旭川市立旭山動物園前園長の小菅正夫(こすげ・まさお)先生の話を聞く機会がありました。

 旭山動物園は「行動展示」ということで、有名になっており、東京の上野動物園よりも入場者数が多いこともあったということですが、それに至るまでは、いろいろな道のりがあり、その動物園改革とも言えるようなお話でした。その内容は動物園だけでなく、私たち企業人も参考になる点が多くありました。

①まず、問題点として、当時の飼育員は動物に対して向かっていたたが、「お客さま」という単語すら意識していなかった。
②全員が危機感を共有することが大事
③全員ができることをする→組織改革にスターはいらない。

 動物がお客さまにお尻を向けていたそうです。飼育員が檻の後ろ側からお世話をしたりするので、動物の意識がお客さま側ではなく、檻の後ろの飼育員側を向いていたそうです。
 ですから、飼育員がお客さまが側の方から歩いていき、世話をするようにしたそうです。動物は、3日で前を向くようになったそうです。

 また、そのときに飼育員にお客さまへ「ワンポイント」解説をするようにお願いしたそうです。飼育員の反発は大きかったようです。何しろ、「人と話をしたくなくて、動物の世話をする仕事を選んだ」という人が多かったからです。しかし、結果的には、お客さまに解説をしたり、紙芝居を作って、みんなができる方法でお客さまへ接したそうです。

 その飼育員の中に寡黙な人がいたそうです。その人のできることは・・・。尾長ざるの飼育舎で、ロープを張って、それにえさを結びつけたそうです。尾長ざるは知恵を使って、ロープをわたり、シッポでぶらさがっらり、しながら、えさを食べたそうです。フラミンゴの前でお客さまが2~3秒しか滞在しないのに対し、この尾長ざるのところでは、40分くらいお客さまが滞在したそうです。

 これが行動展示のきっかけです。尾長ざるの生態というのが、すべてこの展示の中で出ているそうです。アシカのショーと違うのは、これはこの動物の「生きる(食べる・繁殖する)」という自然の行動だからです。”芸”とは違うのです。

 また、旭川の冬はとても寒く、冬は動物園は営業していなかったらしいです。しかし、雪の白の上に広がる青空は美しく、そこに立つキリンはとても立派だったそうで、交渉の結果、冬の動物園ができるようになったそうです。冬に雪の上を散歩するペンギン、雪をまとったホッキョクグマ。冬だからこその動物園がそこにはありました。
 お客さまは山口県とか九州とか暖かい国の外国人が多かったそうです。北海道の人は寒いのが嫌いなので、あまり冬の動物園には来なかったそうです(笑)。
 これなんかは「でも、冬には動物園はできませんよー」を「冬だからこそ、できる動物園がある」という「でも」を「こそ」に変えた良い例だと思いました。

 旭山動物園は20万人以下の入場者数が、300万人まで増えたそうです。これは一時は閉園まで追い込まれていた状況から、「あきらめず、今できることをする」の継続だなあと思いました。

 「止まない雨はない」、「春の来ない冬はない」と言う言葉を紹介されていたのは、本当に辛い時代を乗り切ったご自身の体験からでしょう。

 今は「国立動物園の設立」に向けた夢を実現しようとしているとのことです。

 ユーモアのある話し方であり、余裕を感じる講演でした。パワーポイントや動画も効果的に使われており、話し方からも学ぶことの多い人でした。